T-11 納税者番号と金融証券番号
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T‐11納税者番号と金融証券番号

政府税制調査会、金融小委員会は2004年6月15日に「金融所得課税の一体化についての基本的考え方」を公表した。 金融小委員会は利子・配当・株式譲渡等の金融所得課税について申告分離課税に一元化し、上場株式等の譲渡損益の相殺・損益通算を認めることにより所得税額が圧縮出来株式などの投資促進が期待出来るとしている。 課税庁が損益通算の申告をチェックする場合に納税者番号によるマッチングが必要であるため納税者番号が必要であるとしていた。


日本は欧米と異なり戸籍制度が存在する。明治政府は失敗に終わった戸籍制度を再興した。戸籍制度は東アジア固有の制度である。日本では古代、大化の改新の時に律令制を制定し、戸籍制度を導入した。 国は戸籍により個々の家族構成を具体的に把握出来る。班田収授を行い徴税することが出来た。 しかし、戸籍は中国の家族制度である小家族集団、戸を基にしたものであるため、日本の社会構造である家とは実情が異なるものであった。 平安時代になって律令制衰退後、戸籍制度は、事実上消滅した。明治5年に戸籍制度が復活した。 この戸籍は「新平民」や「元えた」などの同和関係の旧身分や、病歴、犯罪歴などの記載があることから、現在は各地方法務局の倉庫で保管されている。 しかしこれらの情報が漏れている可能性もある。また、この戸籍制度が戦前の徴兵制を支えたということもある。 日本が欧米に比べ納税者番号について拒否反応が強いのはこのような独自の文化、歴史という事情もある。


(反社会的勢力と納税者番号)

けれども、地下経済と反社会的勢力に対して、納税者番号は大変有効である。 JASDAQ、マザーズ、ヘラクレス等の新興市場では、近年反社会的勢力によるこれらの市場での株式公開で資金を得ようとする動きが特に強まっている。新興市場の場合、 会社設立後の比較的短期間で株式の公開を果たせるためキャピタルゲイン獲得が比較的容易である。 また、反社会的勢力は投資組合(いわゆるハゲタカフアンド)を利用して資金難になった公開会社の新株予約権、私募債、MSCB、DESにより株を取得した後、株価操作により不当な利益を得ることも多い。 反社会的勢力による不当な経済活動は更に大規模化している。また、日本の司法・行政は欧米に比べて利益相反行為に極めて寛容であることから、経営者や金融機関は自己の利益を獲得するために恣意的に行動出来る。

(竹中平蔵の金融再生プログラム)

また、平成14年10月に出された竹中平蔵の金融再生プログラムは、主要銀行の不良債権を問題にしていた。 平成16年度には主要銀行の不良債権比率を平成14年10月30日当時の半分程度に低減させることを強制した。 更に不良債権処理のためには再生フアンドの利用をも提案していた。 しかし、再生フアンドにはハゲタカと呼ばれていることからも分かる様に反社会的勢力と関係を持つものも多い。 再生フアンドにはバミューダ、ケイマン、 香港等のタックス・ヘイヴンを利用して租税を回避するものもある。再生フアンドがマネ−ロンダリングに協力している可能性もある。


(2004年6月15日、金融小委員会)

政府税制調査会、金融小委員会は2004年6月15日に「金融所得課税の一体化についての基本的考え方」を公表した。 金融小委員会は利子・配当・株式譲渡等の金融所得課税について申告分離課税に一元化し、上場株式等の譲渡損益の相殺・損益通算を認めることにより所得税額が圧縮出来株式などの投資促進が期待出来るとしている。 課税庁が損益通算の申告をチェックする場合に納税者番号によるマッチングが必要であるため納税者番号が必要であるとしていた。


(公的年金の一元化)

しかし、現在、納税者番号制度の問題は公的年金一元化の所得把握の議論へと移行しており、公的年金の一元化に向け国民全員に付与するというものである。 そして、所得把握の格差問題を解消するための課税強化策とされている。

(IT立国と納税者番号)

韓国の住民登録番号PINは北朝鮮のスパイを摘発するために制度化された。 その後、住民登録番号PINはオンライン上で、生活便宜(教育、就職、運転免許、パスポ−ト、預金、投資、選挙、社会保険等)を向上させ、行政の効率化に貢献した。 また、韓国では日本のような年金記録の問題はなく、住民登録番号PINが、このような問題に有効であると考えられる。現在、税務当局は電子納税に力をいれているが、 最終的には韓国のようなIT国家を目標にしていると思う。


(納税者のプライバシー)

しかし、納税者のプライバシー問題がある。公務員の守秘義務に頼っても個人情報は保護されない。 納税者番号制度が導入されると、課税庁に収集された個人情報が、他の行政機関や金融機関等で転用され、流出する危険がある。

アメリカの社会保障番号(SSN)は、社会保険、納税者番号等のあらゆる行政分野で共通番号として利用されている。 しかし、アメリカではSSNの乱用やプライバシー侵害が社会問題化している。国税職員による数万件の不正覗き見事件も起きている。

スウェーデンの地方自治体では、納税者番号として住民登録番号が使われていて、そこの税源は主に地方消費税であり、住民税や固定資産税はない。 その住民登録番号の管理は税務当局が行うが、スウェーデンの場合は国民が政府を信用し、また信用出来ない政府ならば容易に変えられる国情がある。

また、データの提供や利用についてはデータ検査院が監督している。    
ドイツでは、住民基本台帳番号制は人格権を侵害し憲法違反であると憲法裁判所が判断したために導入を撤回している。イギリスでは、国民の反対により、(国民総背番号制・国民皆登録証携帯制)を撤回している。

(日本税理士会連合会「平成17年度・税制改正に関する建議書」)

また、日本税理士会連合会は、「平成17年度・税制改正に関する建議書」の中で次のように建議している。

「納税者番号制度の検討に当たっては、税務に関する個人情報を十分に保護する制度を構築した上で、国民全体に関わる制度であるとの認識の基、具体的構想を提示し国民の理解を求める。 そして、その理由として納税者番号制度は、課税漏れのない適正な所得課税や資産課税の実現に寄与するとともに、その牽制効果は間接的に申告水準の向上をもたらすと考えられる。 金融所得課税の一体化の観点から、納税者番号制度は、金融所得の正確な把握を行い適正な課税を担保するために必要であるとされている。 しかし、納税者番号制度が導入された場合には、他人に知られたくない個人情報も効率的に収集され、さらに納税者番号の民間利用を認めると民間でのデータバンクの構築も可能となり、 その結果、情報が濫用されるおそれが生じる。 したがって、納税者番号制度の導入に当たっては、情報保護制度をどのように構築するかが極めて重要な問題となる。 現行の行政機関個人情報保護法では、相当な理由がある場合には個人情報の目的外利用の禁止が解除される場合もあり、また、税務に関する情報で一定のものは不開示情報とされている。 少なくとも納税者番号により収集された税務情報は開示対象とし、本人による情報アクセスと情報訂正請求を認め、税務目的以外への利用は禁止しておくべきである。  また、制度導入に当たっては、制度の仕組み、付番方式、付番機関など具体的な内容を示したうえで、導入や維持に要する行政におけるコスト及び民間が負担するコストを試算し、 費用対効果の面からも検討する必要がある。 なお、納税者番号制度は適正な課税を目的とするものであるとの観点からは、希望者だけが番号を利用する納税者選択制は導入すべきではない。 納税者番号制度は国民全体に関わる制度であり、納税者にとっても利便性のあるものでなければならない。 金融所得課税導入だけのための議論ではなく、その将来像を見据えたうえで国民に一層の理解を求めていく必要がある。」


以上のことから、納税者のプライバシーについて様々な意見のある納税者番号については、時間を掛けて論議し国民全体の合意を待つこととし、先に金融番号を創設すべきであると考える。 現在の日本の証券市場や商品先物市場は、ニューヨーク、シカゴ、ロンドンだけではなく香港や上海にさえ劣後している。  
外国投資家の日本の行政や司法に対する不審が背景にある。金融・投資活動を行うすべての法人と個人に金融番号を賦課し、不透明な取引を排除することは税務だけではなく、経済にもメリットが大きい。 英国は、製造業は衰退したが、金融ビッグバ−ンにより金融市場を改革し金融大国として再起した。日本も金融経済を活性化させる必要がある。

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